My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
にしても…。
「…なんで現れないんだろ」
ぐるりと辺りを見渡す。
綺麗に環境整備された墓地は、夜ということもあって怖い雰囲気は多少あるものの、あのミュンヘンでの墓地程の不気味さはない。
シンと静まり返った、私達以外人のいない広い墓地。
陽はもうすっかり落ちて辺りは暗い。
だけど其処で目撃されたAKUMAは、未だ現れないまま。
「雪先輩」
呼ばれて振り返る。
見れば、結界装置を起動させたままこちらを見てくるマオサさんがいた。
「そろそろ結界装置のバッテリーが、切れそうなんですが…」
「…だよね」
不安げに報告されたそれは、予想していた内容だった。
壊れたチェス盤の修復の為、イノセンスを発動させているミランダさん。
其処から動くことのできないミランダさんやイノセンスをAKUMAから守る為、辺り一体に結界を張っているキエさんとマオサさん。
チェスの試合は、リンクさんでもう7試合目。
思いのほか長丁場になり、それでも姿を現さないAKUMAに僅かな不安が生まれる。
このまま結界装置のバッテリーが切れて、そんな所をAKUMAに襲われでもしたら。
最悪イノセンスを奪われてしまうかもしれない。
「二人はそのまま結界でミランダさん達を守ってて。辺りの探索、してくるから」
荷物を背負い直して、キエさんとマオサさんに指示を出す。
こうなれば仕方ない。いずれ出てくるであろうAKUMAを待つより、こちらから捜した方が早い。
「僕も行きます」
「一人でほっつき歩くなよ」
そこへ声をかけてくるのは、アレンと神田。
この二人はAKUMA討伐担当として、今回の任務に当てられた。
エクソシストとしての実力は高い二人だから、一緒に探索してくれるのはとっても心強いんだけど…。
「…うん」
また喧嘩しないかな…。
そっちの方が気掛かりで仕方ないです。