第18章 ロザリオを胸に.

「任務の話をしてただけです。神田は関係ないですよ」

「思いっきり俺の名前言ってただろうが。そいつを変に誘導すんじゃねぇよ」

「してません。平和的解決をしようとしてただけです」

「何が平和だ、この似非紳士野郎が」

「一年中仏頂面のパッツン馬鹿よりマシです」

「んだとコラ」

「なんですか」


　ほらまた！

　ズカズカと歩み寄る神田に、むすっと睨み返すアレン。
　私の両肩を掴んでいたアレンの手を、荒々しく神田が払う。
　そんな二人の間でバチバチと、見えない殺気を含んだ視線がぶつかる。

　今更なんだけど。
　二人が仲悪いことなんて、今更なんだけど。


「なんでここで言い合うかな…！」


　だから私を間に挟まないで下さい…！


「ど、どうしましょうハワードさん…っ」

「放っておいたら、そのうち沈静化するでしょう」


「待って！　見捨てないで！　そんな自然消滅ないから！」


　不安げにオロオロするミランダさんの隣で、サラリと見放すリンクさんに慌てる。
　どう見たって沈静化なんてしないから。
　寧ろ放っておいたら、悪化するだけだから！


「オレ達が割り込んだ方が、悪化しそうですし…雪先輩、頑張って下さい！」

「ちゃんと見守ってますんで！」


　応援してくれるキエさんとマオサさんには悪いけど、応援より助けが欲しいです私は…！


「っ…落ち着いてアレンっ神田との任務、嫌だなんて思ってないから…！」

「神田を庇うなんて、雪さんは優しいですね」

「違っ…」

「俺とこいつの問題なら、テメェは部外者だろ。入ってくんなクソモヤシ」

「モヤシじゃないですアレンです」

「だから…！」


　どんなに声を張り上げても、両脇から殺気を飛ばす二人はお互いしか見えていない。

　やっぱり前言撤回。
　この任務、全然楽なんかじゃない…！




「あんた達、本当にお偉い教団の人なんかねぇ…」




　呆れた声で呟くカーラさんの言葉が、ぐさりと胸に突き刺さった。
　本当、面目ないです。