My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
思わず食い入るように見つめていれば、イザベラのくすりと控えめで綺麗な笑い声が届いた。
「そのブロマイドは一番人気なんですよ」
「だって笑ってるもんね…よくこんな写真撮れたなぁ…」
「ふふ。そんなに珍しいですか?」
「? うん」
頷けば、益々おかしそうに笑われる。
え、そんなおかしいこと言ったかな…ユウが笑ってるのって珍しくない?
するとイザベラはブロマイドの隣を、とんと指先で軽く指し示した。
「なんで神田さんが笑っているのか、私にはよくわかります。だって此処に、その要因である御方が座っていらしたのですから」
「……それって…」
「ええ。貴女ですよ、雪さん」
「………」
そうもはっきりと言われれば、上手く反応なんて返せなかった。
嬉しさと恥ずかしさが入り混じって、なんだか心がこそばゆい。
ユウとの距離を縮められてから、珍しくても笑ってる顔は幾度も見てきた。
でも、なんていうか…日頃でも、こんな表情を浮かべてくれていたなんて。
知らない所で知らないユウの顔を垣間見たような、そんな気分。
こそばゆくって、ふわふわする。
この気持ちは、なんて言えばいいんだろう。
「あ…あの。この写真も、欲しいなぁとか…」
思わずブロマイドに手を伸ばす。
図々しくも思ったけど、どうしても欲しくなって。
試しに問えば、イザベラの手がアルバムを退いて私から遠ざけた。
え?
「ごめんなさい、この写真は注文が多くて只今在庫切れなんです。この一枚は、見本用でして」
えええ…!
そんなに人気なの!
というかファン限定なんだよね?
在庫切れって、どんだけいるのファンクラブ会員…!
「在庫が出来次第、お渡ししますから。それでもいいですか?」
「あ、うん。それなら───」
「納得いかない」
あ、そうなんだ。
貰えることにほっとして笑顔を浮かべれば、突如切り込むように吹き込む、冷たい空気。
見れば、原因は腕組みをして私を睨み付けてくるクロエだった。