My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「つまり、他人の恋愛事情を知りたいが為に呼び止めた、と。そういうことですの?くだらない」
呆れた顔で再び横槍を入れてくるテワクに、キッとクロエの睨みが向く。
そんなクロエを片手で制したイザベラが、深々と頭を下げた。
「すみません。止めたのですが、どうしても知りたいと言うから仕方なく私が代表で付き添いをしたのです」
「知りたいって…ユウのこと?」
「ええ。私達、一応こういう者でして」
す、と両手で差し出されたのは一枚の名刺。
思わず受け取れば、そこに書かれていたのは…Rice fields of God?
なんだろう、何かのコミュニティ名?
下には小さな文字で、神田ユウファンクラ───
「え。」
待て。
神田ユウファンクラ……ブ?
フ ァ ン ク ラ ブ?
「そこの会員をまとめている、代表取締役なんです」
「なんなんですの?管理班にそんな役柄があって───」
「女神…」
「なんですの?」
「女神様ッ!」
「!?」
思わずイザベラの両手をがしりと握り込む。
ま、まさかこんな所で出会えるなんて…!
「あ、あの…?」
「ふ、ファンなんです…!その心意気というか志というか生き様に憧れてて…!サイン下さい!」
「さ、サイン?ですか?」
「なんなんですの…一体」
「ブスな上にバカなの、あれ」
外野の美少女共は黙ってて。
私はイザベラと立て込んだ話があるんだから!
いつもいつも、ユウの傍にいるとチラついていたファンクラブの存在。
それでも確かな存在は一度たりとも見たことがない。
余程気遣いが出来た女性達なんだと思ってたけど、イザベラを見て納得がいった。
この人がまとめ役なら、しっかりした組織になるんだろうな。
「ふふ。あの神田さんの心を射止めた方だから、どんな御人かと思えば…面白い方なんですね、雪さん」
「滅相もない。貴女様の寛大な御心の前ではちっぽけな人間です…!」
私の態度に驚きながらも、嫌がることなく後光が差すような柔らかい笑みを向けてくる。
普通ファンクラブ対象者の恋人なんて、良い気はしないだろうに。
イザベラからは一切クロエみたいな嫌悪感は漂ってこなかった。
やっぱり女神だ。
私のオアシス。
ビバ聖母!