My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「私がまだ報告書仕上げてないから、一緒にしてもいい?意見交換もできるし、その方が早く終わらせられるから」
私の為にと言えば、やっとユウの目がこっちを向いた。
眉間に皺を寄せているところ、私の真意は見破っているんだろう。
私の為なんて単なる理由付け。
これなら一緒にいられるし、ユウの報告書を見てやれる。
「…好きにしろ」
ふいとすぐに目は逸らされたけど、声に棘はない。
少し不服な顔をしているのは、私の意図に気付いた上で受け入れている自分にも気付いているから。
本当、素直じゃないというか。
そんなユウに自然と笑みが浮かぶ。
「神田のあんちゃんって、いっつも偉そーだよなぁ…雪ねーちゃん、よくつき合ってられるよ」
朝食デザートのパフェを食べながらぼやくティモシーに、ユウは勿論知らんぷり。
偉そうというよりは、素直じゃないんだと思うな。
負の感情は何より真っ直ぐ出してくるんだけど、それ以外の感情表現は不器用というか。
そんなユウの態度も扱いも大体慣れたからなんとも思わないけど。
とりあえずティモシーには当たり障りなく軽く笑って返した。
「違うわよ、ティモシー」
「なんだよエミリア」
「ああいうのはお似合いなのよ」
「?? なんで?」
「もう少し大人になればわかるわ」
「はぁっ?なんだよそれッ」
「何?どうしたの」
「雪ねーちゃモガッ」
「ううん、なんでもないっ」
こそこそと言葉を交わすエミリアとティモシーの会話は、よく聞こえなかった。
聞けば何故かティモシーはエミリアに口を押さえられるし。
なんだろ。
「それよりその首の怪我、大丈夫なの?結構深そうだけど…」
「あ、これ?大丈夫、見た目より傷は浅いから。明日には包帯取っていいって言われたし」
話題を変えるように、でも本当に気遣ってくれているんだろう。
エミリアの目が私の首元に向いて、そういえば包帯巻いてたんだっけ、と思い出した。
「ならいいけど…傷口が痛むことがあれば、すぐ声掛けてね」
「うん、ありがとう」
今はもう痛みも違和感もない。
明日にはほとんど治っているだろう。
───あ。
笑って返したエミリアの向こう側。
其処で目を引く人物を見つけて、視線が止まった。