My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「ま、待ってトクサ」
『待ちません。私は貴女の監視と共に貴女の命も長官から任されています。おちおち死んでもらっては困るんですよ』
「大丈夫だよ無理はしないからっ少し時間稼ぎするくらいで───」
『この会話の時間自体が不毛です。踏ん張りなさい』
「えええ…!」
全然話聞かない!
慌ててトクサを止めるも、勝手に話を進める声に焦りを覚えた。
赤羽って。
それ、あの赤羽だよね?
まだ実用したこと一度もないのに…というかあんなの実用できるの!?
『"術成して契とし、焔以て解放す"』
「待って待ってトクサ…!」
「なんだぁ?ごちゃごちゃと喚きやがって」
言霊みたいなものを詠唱し始めるトクサに声を荒げるも、時既に遅し。
詠唱が通信機から伝わっているかのように、じんわりと首のチョーカーが熱を持つのを感じた。
『〝赤羽解朮〟』
じゅ、と耳に微かに響いたのは、"あの時"感じた熱の牙。
「っ…!」
熱い。
痛い。
首元から焼かれるような痛みが広がって、無意識に動いた手がチョーカーを引き剥がそうと鷲掴む。
「あっ…ツ…!」
その手でさえも高熱で焼かれるような痛みに、まともにチョーカーに触れられもしない。
手を離した際に滑り落ちたイノセンスの原石が、足元を転がってAKUMAの前で動きを止めた。
まずい。
「やりィ!イノセンス、ゲッ───」
蠢く触手舌がイノセンスの原石に触れようとする。
より先に、私の手は伸びていた。
───バチンッ!
「………あ…が?」
何かを弾くような鋭さ。
AKUMAが遅れて不可解な声を漏らす。
ぼとりとイノセンスの原石の隣に転がったのは、焼き切れられたAKUMAの舌。
「が…!なん、だァ…!?」
「ぅ、く…ッ」
驚きの断末を上げるAKUMAに構ってなんかいられない。
首を焼き切られそうな痛みに耐えながら、急いでイノセンスの原石を取り上げる。
───バチチ…!
触れれば強烈な痛みと共に、私の肌から生まれるは眩い閃光。
「なんだテメェ…!エクソシストだったのかよ…!」
両腕に付いた無数の目をぎょろ付かせながら凝視するAKUMAに、つい漏れたのは苦い笑みだった。
「だったら、いいのにね」