My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
『大体なんでテメェが此処にいんだよ、雪の監視で引っ付いて来てんだろうが。AKUMAを殺んのはエクソシストの仕事だ』
『そのエクソシスト様の仕事が遅いから、こうして手伝っているだけなんですけどねぇ?貴方が取り逃がしたAKUMAが、彼女の所に向かってしまったんじゃないんですか?』
『んだと…ッ』
『雪ねーちゃん!お願いだからツキカミ助けて~!』
「………」
ええ、と…。
視界に三人の姿は捉えられないけれど、容易に姿は想像がつく。
とりあえず、私の回線巻き込んで喧嘩しないでくれるかな…ティモシーも、泣くのやめて。
耳元で騒がれると結構響くから、この通信機。
「なんだぁ?急に固まりやがって。ビビッてんのか?」
「…いえ、お構いなく」
呼び掛けられて、改めて目の前のAKUMAの存在に気付く。
危ない危ない、一瞬通信機の向こう側に意識が飛んでた。
ユウの言う通り、憑神はイノセンスだから無事だろうけど、ティモシーの本体はわからない。
やっぱりどうにか連れ出さないと。
この揺れと地鳴りの中なら、すぐに憑神も目を覚ますはず。
それまではAKUMAを倒せはしないけど、時間稼ぎはできるかもしれない。
その意図を込めて握っていた大振りのナイフを構えれば、AKUMAは涎の滴る触手舌を揺らして笑った。
「ハァ?まさかそんな玩具でオレを相手にしようってのかよ…!面白れぇ!」
『月城!逃げなさいと言ったでしょう!』
「逃げるよ、憑神が起きてからね。私のミスだから私が責任持って連れてく!」
『っ聞き分けの悪い…!』
そんなの今更。
此処で憑神を見放して、もし結界で助からなかったら。
それこそ本体を失ったティモシーも共にあの世行きだ。
そんなことしたら、エミリアに泣かれてしまう。
耳元で今度はトクサの舌打ちが響く。
普段は薄ら笑いを浮かべて嫌味を言ってくることが多いけど、こういう時は口は悪くても本気で危機を感じてくれているようだし。
案外、良い奴なのかもしれない。
『全く、致し方ありませんね』
そんなことを、ふと思った矢先だった。
『"赤羽"を発動させますよ。付け焼き刃ですが』
「………え」
凄く聞きたくない名詞を耳にしたのは。