My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
〝赤羽〟
主に黒羽を術の主体として扱う鴉が、特異別で扱う術式。
そして赤羽解朮は私専用に練られた術だ。
私の体を縛っているイノセンスの力で身体に揺さ振りをかけ、ノアの力を呼び起こすというもの。
それはトクサの言う付け焼き刃というより、私には諸刃の剣のように思えた。
吉と出るか凶と出るか。
一歩間違えれば、自身の体を焼き尽くしてしまう手段でしかないから。
「相手がエクソシストなら容赦しなくていいな…!」
「全然よくない!男性は優しい方がモテるんだから!」
「しゃらくせぇ!」
「ッ…!」
チョーカーから発せられる高熱は痛みを与えてくるけど、我慢できない程じゃない。
同じに痛みを与えてくるイノセンスの原石を、今度は取り落とさないように強く握り締めた。
私の放った閃光で切断された、AKUMAの触手舌。
そこからAKUMAのオイルを撒き散らしながら、切断面がぼこぼこと膨れ上がる。
超速再生しながら伸びてきたのは、複数のうねる同じような舌…うわぁ気持ち悪い。
鞭のように撓らせ振りかかってくる無数の触手の打撃に身を構えれば、触れる前に全て弾き返された。
私の体を纏う、電光のようなエネルギー派で。
まるで目に見える電圧の結界みたいだ。
「く、そ…ッなんだ、その技…イノセンスの気配はしねぇってのに…ッ」
「は…今更気付いたの」
AKUMAの攻撃から身を守ることはできているのに、決定打を下せていない。
挑発の笑いもぎこちないものにしかならなかった。
ルベリエ長官の命の下、トクサ達鴉の特別訓練を受けながら知った私のノアの力。
それはどうやら守備としての発動は良好であるものの、攻撃としての力に変えることは難しいというものだった。
このままじゃパリでAKUMAを倒したようにはいかないかもしれない。
やっぱり急な実用化は無理なんじゃ───
「イテテ…なんやっしゃ、急に意識飛んでしもた…」
その時、待ちに待った声が背後から届いた。
「憑神!」
「ほぇ?」
振り返れば、予想通り。
結界の中で頭を抱えて起き上がる、ティモシーの本体in憑神が見えた。
よし、憑神が起きたなら此処に長居する必要はない!