My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「そんな怖い顔しないでよ。色々あった一日だったけど、最後は楽しい気持ちで終えられそうなんだから」
「……チッ」
「はいはい、舌打ちでもなんでもしていいから。皆の所に戻ろうっ」
ほらほらと背を押し急かす雪に、渋々と神田の目がアレンから逸らされる。
大人しくされるがまま、背中を向ける神田にアレンの目が瞬く。
驚いたような、感心したような。
そんなアレンに、神田の背を押しながら振り返った雪が、苦笑混じりに口をぱくぱくと開閉させた。
声は聞こえなかったが、動きでわかった。
"ごめんね"、と。
「何コソコソ会話してんだ」
「っしてないから。背中に目でもついてんの。千里眼持ちですか」
「持ってねぇよ。お前がわかり易過ぎんだ」
「いや、絶対にユウが変に鋭いだけだと思う。蕎麦10玉賭けてもいい」
その些細な気配も察した神田が低い声を漏らせば、慌てて雪の目は彼へと向く。
神田同様背を向けた雪の目は、もうアレンを映してはいない。
「なんだその阿呆な賭け金」
「ユウには金貨より値打ちあるものでしょ?」
「阿呆か。金貨があれば蕎麦だって買えるだろ」
「わぁ………正論」
「なんだその顔。俺が幼稚園児にでも見えんのか殴るぞ」
「いや、なんかつい…って痛い痛い!もう暴力振るってるからっていつも言ってるんだけど!尻尾引っ張んないで痛い!」
顔を歪ませ雪の尾を遠慮なしに引っ掴む神田に対し、やめろと抗議しつつも逃げ出しはしない。
そんな雪の姿をじっと両目に映しつつ、アレンははぁと僅かな吐息をついた。
「……想い人、か」
言われずともわかる。
二人の間にある特別な関係性に、アレンは眩しいものを見るように微かに目を細めた。
神田の隣に当たり前のように立つ雪の姿は、儚げには見えない。
先程までノアであることへの不安を抱えていた姿は、嘘のように消えていた。
雪自身が口にした"彼を守りたい"という強い思いが、確かにそこに存在しているからなのだろう。
「雪も充分、強いんじゃないかな」
アレンは凄いね、と褒め称えた雪もまた。
確固たる信念を胸に、教団で立っているのだ。