My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「"あ"じゃねぇよ。いつまでも戻って来ねぇと思ったら、座り込んで話なんかしてんな」
「ごめん、つい。リナリー達は?」
「別行動でお前達を捜してる。戻るぞ」
「うん」
溜息混じりに眉間に皺を寄せて催促する神田に、雪の腰が上がる。
追うように神田へと無言で目を向けていたアレンと、神田の視線が重なる。
が、それは一瞬だけ。
早々と興味なく逸らしたのは神田の方だった。
くるりと背を向け、ついて来いと無言の催促を掛けてくる。
大人しく従うように、雪は足を向けた。
「行こう、アレン。歩ける?」
「はい」
体調を気に掛けてくる雪に頷きながら、同じくアレンも身を起こす。
戦利品の大量に詰まった大きな籠を、そのまま軽々と背負い上げた。
「ったく、モヤシ見つけたんなら早々連れて戻って来いよ。犬より使えねぇ」
「だから私犬じゃないから。使えなくて悪かったですね」
神田の背中に向けて言葉上では謝罪を向けながら、アレンに対しては苦笑混じりにやれやれと肩を竦める。
いつものことだ、とでも言いたいのだろう。
そんな雪に、アレンもくすりと笑みを返した。
「でも僕をちゃんと見つけてくれましたよ、雪は」
「今日一番、この姿になれて良かったと思えたよ」
ほのぼのとした雑談だった。
お互いに穏やかな笑みを浮かべて、何気ない言葉を交わす。
そんな当たり障りないアレンと雪の空気。
「("雪"?)………」
それを壊したのは、ぴたりと足を止めて振り返った吸血鬼の圧。
「「怖っ」」
思わず息ぴったりに雪とアレンが突っ込む程に。
ギロリと深紅が混じった鋭い眼孔を向けてくる、神田のオーラは禍々しい。
「………」
「あの、顔怖いんですけど。すんごく。無言で喧嘩売るのやめてユウ」
「言いたいことは、なんとなくわかりますけどね。怖いんで黙っておきます」
口にするのも面倒だと言わんばかりの不満顔を向けてくる神田に対し、アレンもまた核心には触れず。
触れたら触れたで、更に面倒なことになるのは目に見えていた。