My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
強い芯を持ち、弱き心に耳を傾け、藻掻き迷いながらも、己の見据える道を見つけていく。
そんな紆余曲折ありながら真っ直ぐにも見える雪という存在は、不可思議なものだ。
だから世迷言を口走ってしまったのか。
(違うな。ただの戯言だ)
ふ、とアレンの口元が微かに歪む。
歪んで笑う、ピエロのように。
失笑する戯言を零してしまう程に、彼女は魅力的に映ったのかもしれない。
強い力を得られながらもその力を望まない雪は、ノアの中では間違いなく異端者だ。
他とは違うからこそ、見えてくる可能性。
「アレーン!行くよ!傍離れないで、また迷子になっちゃう」
「あ、はい」
路地裏から出て賑やかな街並みに身を置いた雪が、片手を大きく振り呼びかけてくる。
はっと目を瞬くと、アレンはぺこりと頭を下げた。
(危ない危ない)
歪んだ笑みは彼女に見えなかっただろうか。
片手を口元に寄せつつ伺い見れば、隣で不服そうな顔を向けている神田と何か言葉を交わしている。
要らぬ心配だったらしい。
何故なら、あの"声"にも気付かなかったのだ。
「"雪"、ね」
頭に刻むように、その名を紡ぐ。
同じであって、同じではないその存在を。
暗く細い裏路地の出入口。
煉瓦の床を照らしている鮮やかな明かりを前に、アレンは足を止めた。
一歩踏み出せば、自分もその光の世界へと身を落とす。
後戻りはできない。
それでも、止まる訳にはいかないのだ。
〝立ち止まるな〟〝歩き続けろ〟
振り返って過去を悔やむ暇などない。
不安に駆られ、足が竦もうとも。
見据える先は、ただひとり。
その為ならば、手段など選んではいられないのだから。
「今度は気付くかな?」
目覚めの声は。
("アレン"じゃなくて、)
「"俺"の声だってこと」
"君"に、届くだろうか。
Shadows of thousand years rise again unseen,Voices whisper in the tree,
〝Tonight is Halloween.〟