My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「アレンが呼んだんじゃ、ないの?」
「いいえ、呼んでませんよ。AKUMAと戦ってたから、余裕もなかったですし」
「………そっか。うん、そうだよね」
当たり前の顔で、不思議そうに首を傾げながら否定する。
そんなアレンの様子に、ほっと雪は息をついた。
いくら都合が悪いと言え、自分が原因で雪を窮地に追いやったとなれば、アレンがそれを黙っているはずがない。
雪のノア事情を初めて知らされた時のように、周りなど気にせず謝罪してくれるだろう。
アレンの性格を知っているからこそ、断言できる。
となれば彼は嘘をついていない。
あの声は空耳か、全く別の"何か"だったのだ。
「よかった」
「? そう、ですか?ならいいですけど…」
ぱっと明るい笑みを浮かべる雪に、未だに不思議そうにしながらも雪が良ければ、とアレンも笑顔に変わる。
「うん。それじゃあ戻ろっか。皆も心配してるだろうし───」
「あ」
しかし背を向け大きな菓子籠に手を伸ばせば、止めたのはアレンの声。
そして、再び手首を掴む右手。
「何?」
「ぁ……いえ、…その…」
「?」
「……もう少し、此処に、いませんか?」
「え?」
「…折角、僕と雪しかいないから…もう少しだけ、此処にいたいんです。…見張られてる気が、しないから」
目線を逸らしつつぽそぽそと投げ掛けてくるアレンの言葉に、雪はきゅっと唇を噛み締めた。
その気持ちは、今ではよくわかる。
神田と二人きりでいる時と入浴就寝時以外は、ほとんどと言っていい程トクサの監視がつくようになった。
ラビ達のように仲間意識も持たず淡々と観察してくる目は、中々慣れはしない。
「いいよ」
悪いと思っているのか、手首を掴む力は弱い。
アレンのその手の上に自身の手を重ねると、雪は笑って頷いた。
「アレンも本調子じゃないみたいだし。此処で少し休んでいこっか」
路地裏の壁に背を預けて、すとんと腰を下ろす。
隣に座れとでも言っているのだろう、添えた手を引く雪に、素直にアレンは従った。