My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「アレンとこうして二人きりになるのは、前に教団の廊下で捜してたティムを届けた時以来かなぁ」
「そうでしたっけ」
「うん。あの時も少し具合が悪そうにしてた。…もしかしてノアのことが原因だったり、した?」
軽く首を傾げて、下から覗くようにしてアレンに問い掛ける。
今まで誰にも言えなかったこと、聞けなかったことをすんなりと口にできるのは、やはり14番目というノアメモリーを抱えているアレンだからだろう。
「……時々、不安になることはあるんです」
問いに返されたのは、答えかどうか。
真相は雪にはわからないが、アレンも恐らく誰にも話さなかったことを口にした。
それだけはなんとなく理解できた。
「自分の歩んでいる道が、正しいのか…これでよかったのか。行き着く先に、自分の望むものはあるのか。未来が見えなくて、時々足が竦む」
「…未来は、誰にも予想できないものだから…」
「そうですね。だから過ちも犯す」
「…過ちは、何も悪いことだけじゃないと思うよ」
雪には向けられず、じっと煉瓦の道を見つめる銀灰色の目は、何を思い何を見つめているのだろう。
気付けばそんなことを呟いていた。
「偉そうな言い訳にしかならないかもしれないけど…自分が過ちと思っていたものが、他人にはそう見えないこともある。それがあったから…見つけられるものも、きっとある」
ゆっくりと向けられる銀灰色の目をしかと見つめて。
雪の脳裏に浮かんでいたのは、幼き日、初めて黒の教団を訪れた時のことだった。
あの時、実験台になることを恐れて逃げ出していたら。
きっと親同様に大切だと思える彼を見つけ出すことは、できなかった。
「だから自分を全部否定なんかしないで。私は今のアレンと出会わせてくれたこの道に、感謝してるから」
「………」
「…や、やっぱり偉そうかな…」
「……いえ」
まじまじと見てくる銀灰色の目に、もごもごと雪が口籠れば否定された。
優しく、片手を握られて。
「確かに、こんなふうに雪と言葉を交わせるとは思っていませんでしたから。そこには感謝、できるかもしれない」