My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「…本当に、大丈夫…?アレン…」
恐る恐る、ゆっくりと伺うように問いかける。
雪の不安げな声を耳に、やがてぱっと手首からアレンの手は離れた。
「ぁ…と…ごめん、なさい。少し、ぼーっとして」
ぱちぱちと瞬く瞳。
我に返るように、申し訳なさそうに笑い掛けてくる。
どうやら言葉通り、心ここに在らずであったらしい。
やっと感情らしい感情を見せたアレンに、雪はほっと息をついた。
「具合が悪いなら悪いって遠慮なく言ってね。さっきも言ったけど、私に無理に笑わなくたっていいんだから」
「…はい」
笑顔は浮かべているものの、声にはどことなく覇気がない。
やはり無理をしているのだろうか。
不安げなアレンを見ていると、つられて雪にも不安な思いが立つ。
(そういえば…あのこと、聞いてない)
ノアでありながらも、アレンとお互いを認め合うことができた。
しかし肝心の、パリ任務先で雪がノア化したきっかけ。
それは果たしてアレンが原因だったのか、未だに問い掛けられていない状態だった。
「……ねぇアレン…一つ、聞きたいことがあるんだけど」
この様子ならば、素直に応えてくれるだろうか。
もしアレンがノア化の原因であったなら、それを黙秘している理由を話してくれるだろうか。
折角、ノアのことを話しても縮めることのできた仲。
それがこの問いで変わってしまうかもしれない。
それでも、恐る恐る雪はアレンの顔色を伺いつつ問い掛けた。
「私が、パリでノア化した時…"声"が聞こえたの」
「…声?」
「うん。…"おかえり"って呼ぶ声。誰の声かわからなかったけど、確かに聞こえた。それを耳にした途端…頭痛が、して。気付けば体はノアのものに変わってた」
「………」
「あの声…って、アレン、のもの…?」
一言一言、言葉を紡ぐ度にどくりと心の臓が嫌な音を立てる。
アレンの表情は変わらない。
驚いた様子もなければ、焦った様子もない。
ただ静かな沈黙が、少しだけ怖い。
無意識に雪は、胸の前で両手を握り締めた。
「なんのことですか?」
きょとん。
正にそんな効果音が付くような顔でアレンが示したのは、首を傾げての疑問詞だった。