My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「お、重い……アレン?」
悪戯を仕掛ける前に、籠を置いて逃げ出した子供達。
無事取り返した巨大な籠を背負い雪が路地裏に戻れば、やはり其処にはアレンが一人取り残されていた。
壁に背を凭れて辛うじて立っているかのようなアレンに、心配するように肩にティムが寄り添っている。
具合でもまた悪くなったのだろうか。
「大丈夫?お菓子は無事に取り戻せたよ」
どすん、と籠を地面に下ろして、再度傍に寄りアレンの様子を伺う。
普段の彼らしさを取り戻した姿にほっとしていたが、やはり不調を隠して無理していたのかもしれない。
「アレン?」
再度呼びかければ、ゆっくりと上がる顔。
朧気な目をぱちりと瞬いて、眠たげな目がやがて雪を映すと丸くなる。
「………」
「…アレン?」
「………」
「おーい。アレーン。大丈夫ー」
「…………………雪…?」
「わお、デジャヴ」
ぽかんと無言で見てくる彼の目の前で、ひらひらと手を振る。
やがてぽつりと返されたのは、つい先程アレンを見つけた時と酷使したものだった。
まるで先程のやり取りを再現しているかのようだ。
「本当に大丈夫?熱でもあるんじゃないの」
堪らず溜息をつきながら、ぺたりとアレンの額に触れる。
鋭い爪を持ってはいるが、怪我をさせぬようにと優しく触れる雪の手。
ぴくりと微かに肩を揺らしただけで、アレンは抵抗を見せなかった。
「うーん…熱はないな…寝不足でも祟った?最近、激務だったもんね」
「………」
「お菓子も取り戻せたし、リナリー達見つけて教団に戻ろっか。今日は付き合わせてごめんね」
額から離れる手。
苦笑交じりに謝罪する雪の手首を、伸びたアレンの右手がぱしりと掴み取った。
「アレン?」
どうしたのかと目で問えば、返事はない。
「………」
じっと無言を貫くアレンの目は、しかし一度も逸らされることなく雪を見つめていた。
無言の圧のようなものに、そわりと妙な気配が立つ。