My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「───くっそ…重いなぁこのカゴ…」
「こんなにお菓子が入ってればなー」
「どうする?警察に届ける?」
「なんでだよ、折角見つけたのに───」
「待って!」
「え?」
ずるずると巨大な籠を押しながら進む子供達。
やはり会話からして偶然見つけたのだろう。
そしてあわよくば自分達の物にしようとしている姿に、慌てて雪は彼らの前に立ちはだかった。
「そのお菓子、私の知り合いのものなの!返してくれるっ?」
「はぁ?しりあい?」
「ほんとかよー」
「それ、ねーちゃんもお菓子欲しいだけなんじゃねーの?」
「嘘じゃないから!ねぇアレ───いない!」
本人が語れば話は早い。
振り返り助言を求めようとすれば、雪の目に見知った白髪は映り込まなかった。
どうやらあの路地裏から出てきてはいないようだ。
「ほら、やっぱりウソだ」
「これはオレ達が先に見つけたんだっての!」
「だから嘘じゃないんだって。本当にそれは…っ」
「ハロウィンは子供がお菓子を貰う日なんだぞー」
「ねーちゃん、いい歳して大人げねーぞ!」
多数でいれば、怖いものなどないのだろう。
罪悪感はないのか、言いたい放題捲くし立てる子供達に、ひくりと雪は口元を引き攣らせた。
確かに彼らからすれば自分は大人かもしれないが、ハロウィンは誰だって楽しむ権利はあるはずだ。
元よりその菓子はアレンのもの。
いくら子供相手であろうが、譲る気はない。
「…そうね、今日はハロウィンだものね」
「お?」
「あれ、あっさり…」
「だから許される日だものね」
「あっ」
「だからこれはオレ達のだって…!」
がしりと、目の前の籠を掴む。
雪の手を子供達が剥がそうとすれば、鋭い爪がみしりと籠の側面に喰い込んだ。
「トリック オア トリート」
「え?」
「ひ、」
「うわ…っ」
編み込み状の籠をぶちりぶちりと簡単に突き破った鋭い狼の手が、籠の縁を鷲掴む。
低い声で投げかけられた、本日のみ有効な魔法の言葉。
ぐるると低い唸り声を耳にし、子供達の顔は一斉に凍り付いた。
前髪の隙間から覗く、鋭く光る金色の眼孔。
「どんな悪戯されたい?」
それは肉食獣そのものだった。