第45章 10/31Halloween(番外編)

じわりと浮かぶは、確かな幸福感。



「…我が弟は良い子だね」

「なんで僕弟なんですか」

「だって姉に見えてたんでしょ？アレンが弟かぁ…いいなそれ。お姉ちゃんって呼んでもいいよ」

「よ、呼びませんよっ流石にそれは！」

「えー」

「なんで残念そうなんですか」

「アレンみたいな弟欲しい…」

「本当に残念そうな顔して言わないで下さい」



しゅんと獣耳と尾を垂らす雪に、不服そうな顔をしながらアレンは眉を寄せた。



「僕は雪の弟になりたい訳じゃないですから」



不意に呼ばれる名に、不覚にもどきりとしてしまった。
可愛らしい弟のような少年が、一人の異性に見えて。



「…我が弟は格好良いね」

「だからまた…っあ！照れてるでしょう。照れるとよく茶化しますよね雪って」

「さぁそろそろリナリー達が迎えに来てくれるんじゃないかな…！」

「図星だからって逃げないで下さいっ」

「あ！アレンのお菓子籠発見！」

「何をデタラメなことを言───籠！！！！」



慌ててアレンの腕の中から抜け出す雪に、眉を寄せつつアレンが追う。
はいはいと肩を落としながら、向けた雪の視線の先を辿り。
賑わうハロウィン行列の中に見知った巨大な菓子籠を見つけた瞬間、くわっと両目は見開いた。



「アレンのだよね？あれ。知らない子供達が持ってるけど…」

「僕のです！間違いないです！」

「じゃあ返して貰わないと。行こうアレン！」

「あっ待って雪───つぅッ」



巨大で目立つ籠を偶然にでも拾ったのか。
笑顔で運び去ろうとする子供達を追い、路地裏から飛び出す。
そんな雪を追おうとしたアレンは、一歩踏み出した途端に足を止めた。

ずきり、と痛んだのは頭の奥底。