My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「……うん?」
予想外のことに、思わず目を瞬き反応が遅れてしまう。
そんな雪を前にアレンは、ぎこちなく視線を暗い煉瓦の道へと落とした。
「…とか、呼んでも…いい、ですか…」
「それは、別にいいけど……そういえばアレン、割と周りを呼び捨てするのに、私にはそうじゃなかったね」
紳士的に優しい物言いをするアレンだが、感情が高ぶると少年らしい口調に戻ることがある。
そんなアレンから科学班のジョニーが見つけた、"とある癖"。
それは、心を開き慣れ親しんだ相手には敬語が外れる傾向にある、というものだった。
恐らくそれがアレンの素なのだろう。
その証拠に、丁寧な言葉を扱ってはいるが、周りを呼ぶ時は、余程年上であったりしなければ砕けて呼ぶことが多い。
しかし雪に対しては、リナリーのように砕けた呼び方はしていなかった。
「なんとなく、機会を見失ってしまったというか…女性のファインダーだってこともそうだったけれど、エクソシストである神田相手にしっかり渡り合えてる雪さんは、強いお姉さんのような印象があったから」
「渡り合えてたかな…主にサンドバックにされてたような…」
「それでも負けずに向かっていたでしょう?あの神田に。神田はリナリーには手を出さないけど、雪さんには遠慮なく拳を出してたから。尚の事凄いなぁって思ってました」
「あ。やっぱりアレンにもそう見えてたんだね。あの扱いの差はどうかと思うよね…私もリナリーと同じ女なんだけど」
「だから良かったんじゃないですか?」
「? だから?」
「性別の枠を考えずに雪さんを雪さんとして見てたから。だから、今の神田がいるんじゃないかなって。僕はそう思う」
「………」
すとん、と。
まるで抵抗なく雪の心に落ちてきたアレンの言葉。
他人から見た、雪に対する神田がどう映っていたのか。
リナリーやミランダから聞く彼とはまた違う姿に、言葉は咄嗟に出てこなかった。
何かと神田と衝突し犬猿の仲であるアレンが言うならば、それは確信あることなのだろう。