My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「アレンって、いつも誰かの為に笑ってる人だから。偶にはそうやって我儘言っていいと思うよ」
「我儘って…でもこんなこと、流石に」
「私も同じだから」
白い頭に手を乗せたまま、今度は優しく触れるように撫でる。
ふわふわのきめ細かい髪は、今のアレンの儚い脆さをそのまま表しているようにも思えた。
「私も、不謹慎だけど…アレンがいてよかったって思ってる」
「……本当、に?」
「うん」
驚きで丸くなる銀灰色の目をしかと見返して、雪は苦笑混じりに肩を竦めた。
「前に書庫室で夜中に出会ったこと、あったでしょ。ノアのこと調べてて。あの時アレンは、私と同じ不安を抱えてたんだって後で知った時、なんで私が気付いてやれなかったんだって。そう思ったから」
「………」
「独りじゃないんだって思えることは、きっと凄く大事なことなんだよね」
独りだったら、否応無しにノアであることを晒してしまったパリでの任務まで、抱え続けてなどいられなかった。
詳細は伝えられずとも、待つと言ってくれた神田が傍にいたから、立つことができていたのだ。
雪自身、支えの大切さは身を持って知っていた。
「最低なんかじゃないよ。私も一緒だから。アレンは、独りじゃない」
「…っ」
ふるりと、髪と同じに真白なアレンの睫毛が揺れた。
「………ごめん」
「? 何───」
小さな小さな謝罪。
言葉を辛うじて獣耳で拾い上げた瞬間、伸びた二つの腕に囲われた雪の体は、あっという間に閉じ込められた。
「アレ、ン?」
目の前のアレンによって。
引き寄せる腕には、いつものアレンらしい優しさはない。
強く抱きしめられて、前のめりに雪の体が傾く。
「神田のものだってことは、わかってる。でも少しだけでいいから…こう、させて下さい」
雪の肩に顔を埋めるようにして、くぐもった微かなアレンの声が届く。
儚い本音のように聞こえて、雪は到底抗う気になどなれなかった。
寧ろ、今の自分に何かできるのならと。
自然と伸びた手は、そっとアレンの背に回っていた。