My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「…なんであの時、謝ったの?」
暗く狭い路地裏の中。
座り込んだアレンと向き合ったまま、雪は問い掛けた。
あの広間で問うたものと、同じことを。
「…………それは…」
今度は二人を阻む者は、此処にはいない。
此処はあの広く冷たい教団の広場ではない。
ルベリエも、監視としてのリンクやトクサもいない。
そのことがアレンの背を押したのか。
理由は定かではないが、あの時開かなかった口を彼は確かに動かした。
「僕の…最低さに、です」
「最低って…」
「………安心したんです」
俯く顔。
白い髪に隠れたアレンの表情は、わからない。
「雪さんのノアの真実を知って、僕と同じ立場になるとわかった時…安心、してしまったんです。僕一人じゃないんだって。僕だけじゃないんだって。ほっとしてしまった。…雪さんは望んだことじゃなかったはずなのに」
ぽつぽつと落ちゆく言葉は、儚く消え入りそうなものだった。
しかしそうはさせまいとするかのように、拳を握ったアレンは噛み締めるように思いを吐き出した。
「雪さんの存在を都合良く感じてしまった自分が、許せなくて…最低で。謝らずには、いられませんでした」
「………」
「…ごめんなさい…」
項垂れるように垂れた頭。
絞り出すように向けられた謝罪は、少しだけ泣き出しそうな声に聞こえた。
普段、どんな時でも笑顔を絶やさず自分より相手を重んじるアレンからはあまり想像できない姿。
しかし不思議と、それが年相応な彼の本当の姿なんだと雪には感じ取れた。
そう思えば、手は勝手に動いて。
「わっ?」
わしっと白い頭を掴むように手を乗せたかと思えば、わしわしと強いくらいに撫で回した。
「な、何…っ雪さんっ?」
困惑気味に上がるアレンの顔が、雪を捉える。
ぼさぼさになった頭を抱えるアレンを覗き込むと、雪はにっこりと笑った。
「よかった」
「え?」