My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「ええー…せめてあの女の子にしてくれないかな…同じ女子同士」
「テワクでは貴女を持て余してしまうでしょう。私が適任なんですよ」
「自分で適任とか言う?」
「言いますね」
こんな男が監視に付くのかと堪らず顔を歪める雪に対し、にこにこと変わらない笑顔を向けるトクサの相性は見るからに悪い。
「………」
そんな二人を離れた場から見ていた神田もまた、眉間に皺を刻んでいた一人だった。
「ユウ、顔怖」
「あ?」
「オレに凄むなさ。忠告してるだけだっての」
じっと険しい顔で雪とトクサを睨むように見る
神田に、ヒソヒソと声を掛けに来たのはブックマン一族であるラビだった。
さり気なく神田と距離を取り、視線も余所へと向けたまま。
周りに悟られぬよう話し掛けるラビに、鋭く黒い眼孔が向く。
「下手に殺気とか飛ばすなよ。今此処でユウが雪のことで動いたら、ああして一人で立ってる雪の意味がなくなるさ」
ノアである雪のことを事前に知り、認めた神田やコムイに、一度足りとも雪は目を向けなかった。
今この場で意図的な視線一つ送ることが、何を意味するのか。
自分の立場を理解しているからこその行動だ。
「悔しいけど、オレじゃ駄目なんさ。雪の心を救えるのは、お前なんだから。だから馬鹿な真似して自分の立場を悪くさせんなよ。ユウの為じゃなく、雪の為だ」
「………」
ラビの雪への思いが特別なことは、以前の彼との衝突で神田も気付いていた。
ブックマンという立場を危うくしてまで神田に雪の思いを伝えに来たのだ、生半可な想いではないだろう。
やがて静かに、神田の目がラビから外される。
向けた先は、遠目にある雪の姿。
ラビの想いは理解した。
彼のお陰で雪との今があることも、理解している。
だからと言って譲る気などないが。
「…わかってる」
静かに告げる神田の目は、それから一度も雪から外されることはなかった。