My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「ふん。現にそうだろ。折角骨のある死合が出来そうだってのに。こんな腑抜けた相手じゃ、殺る前から気分が削がれちまう」
「そこから色々と間違っていると言うんだ。ノアだから何をしてもいい訳ではない。貴様の都合の良い玩具にするな」
「じゃあなんだってんだ、お仲間とでも言いたいのか?俺らを殺す能力(ちから)を持ってる奴を」
声は決して荒立ってはいないが、ピリピリとした静かな殺気が湧き立つ。
狂戦士であるソカロの戦闘能力は、元帥の中でも飛躍的に高い。
しかし負けず劣らず、秀でた才を持つクラウドが凄めば、周りのエクソシストでは止められない。
「まぁまぁ。そんなに殺気立たないくれるかい、二人共。息が詰まるなぁ」
其処にのほほんと、ソカロとは別の意味でその場にそぐわぬ声を掛けたのは、残りの元帥が一人、ティエドールだった。
「彼女のことは、各々で見極めたらいいさ。私はそうすることにするよ」
にこりと笑うティエドールに嘘は見受けられない。
言動一つで空気を柔らかいものに変える力量は、流石と言おうか。
ティエドールの発する雰囲気にそれこそ気でも削がれたのか、ソカロはやれやれと肩を落としただけで噛み付きはしなかった。
「───それでは、この件はこれにて」
パンパンと手を叩き、その場を締めたのはルベリエだった。
この緊迫した場から逃れられることに、雪は知らぬうちにほっと息をつく。
そんな中、唯一一度も雪に目を向けなかった者がいた。
アレン・ウォーカーだ。
さながら、唯一大きな動きを見せた人物でもある。
「───雪さん」
ルベリエに促され、サードエクソシストの監視の元その場を去りゆく。
その雪の足がアレンの傍を通り過ぎた時、初めて呼び止められた。
雪にしか捉えられない、小さな小さな声で。
向けた雪の目に映ったのは、逸らし続けていた銀灰色の瞳を向けてくるアレンの顔。
それは一言では片付けられない、複雑な表情を浮かべていた。
アレン本人が、きっと迷っているのだろう。
恐る恐る向けた目は迷うように雪を捉え、結ばれた口を開き彼が口にしたこと。
「…ごめんなさい」
それは深い謝罪だった。