My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
静寂。
息を呑むような、張り詰めた空気。
皆の目が自分へと向いていることに目を逸らしたくなるが、ぐっと雪は拳を握り踏み留めた。
一挙一動、注目されているというより見張られているような感覚。
明確に変わった自分の立場を改めて実感した。
「………」
しかし何をどう話せばいいのか。
大方のことはコムイとルベリエが説明した。
中々口を開けずにいた雪が行動に示したのは、俯かずに上げたままでいた頭を下げることだった。
「ずっと隠していて…申し訳ありませんでした」
今更、ノアのことを隠し続けていた自分を信じろなんて言えない。
教団で前を見ずに生きてきた自分が、それでも味方だからと胸を張ることもできない。
できることは、ただ唯一。
「…私は私です。月城雪であることに変わりはない」
自分を見失わないこと。
神田は雪自身を見て、ノアであることも認めてくれた。
他人である彼が、そこまで受け入れてくれたのだ。
ならば自分が自分を認めずしてどうする。
「それだけで良いのですか?他に言うことは?」
「…ありません」
ルベリエの誘いに、首を横に振る。
(今は、これだけでいい)
この場で延々と語る気はない。
もし何か話すとすれば、それは個々に向けてだと雪は感じていた。
この場にいる全員を認めさせるような饒舌さも持っていなければ、啖呵も切れない。
どう足掻いても自分には無理だ。
ならば地道に、一人一人に目を向けていくまで。
そうして、神田やラビが雪という個人を見ていてくれたように。
「んだよ、ノアだってのに随分と弱そうなもんだなァ。つまんねェ」
「貴様は余計な茶々を入れるな」
緊迫した空気に、拍子抜けしたとばかりのだるけた溜息を落とす。
場の空気を読まず言動するのは、元帥としての力量と言うより本人の性格が強く出ているようだった。
そんな狂戦士であるソカロに、同じく元帥であるクラウドが厳しい目で忠告を向けた。