My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
自分が大切にしている女性を、大切に扱ってくれたのだ。
例の一つも言わねばと、ティモシーは満面の笑みでリンクへと頭を下げた。
「っと、違った」
しかしそれは一瞬だけ。
ぱっと顔を上げたかと思えば、仕切り直すようにラビとリンクを見上げる。
何かと見返す二人の目に映ったものは。
「さんきゅーな。ラビのあんちゃんに、リンクのあんちゃん」
「へ?」
「…今なんと?」
へへっと鼻の下を擦り、照れ臭そうに笑うティモシーだった。
「だってオレ、あんちゃん達の"仲間"だし!ちゃんと名前で呼ばねーとな」
そんなティモシーに、エミリアは言葉無く顔を綻ばせた。
傍から見ればただの言い換えだが、それだけティモシーが彼らに心を開き歩み寄ろうとしている様が伝わってきたから。
「わかればいいんさ、わかれば」
「良い心掛けです」
「わっ」
それはエミリアだけではなかったのだろう。
わしゃわしゃと笑顔のラビの手が、ティモシーの頭を乱暴に撫でる。
リンクもまた普段と変わらない物言いだったが、幾分感じる空気は柔らかいものだった。
「あ。でもアレンのあんちゃんにはお菓子の数負けたけど」
「ああ、アレンのは異常さ。食への執念がな」
「あんなのと比べては駄目ですよ、ティモシー。あれは意地汚くがめつい悪魔です」
「散々な言われようね、アレン君」
きっぱりと首を横に振り顔を顰めるラビとリンクに、共にハロウィン参加していたリナリーは思わず苦笑した。
確かにアレンの食への欲は、人並み以上。
ただ受け入れてしまえば、それもまた彼の愛嬌だ。
しかし「やめて下さい」と苦笑混じりに否定する声や「なに言ってるんですか」と食の素晴らしさを訴える声は聞こえてこない。
ラビやリンク相手に黙って大人しくしているなんて、珍しい。
戦利品として頂いた菓子類でも頬張っているのかと、隣にいるアレンへと呼び掛けたリナリーは目を丸くした。
「…アレン君?」
つい先程までいたはずの、見慣れた白髪が忽然と消えていた。