My important place【D.Gray-man】
第15章 12/31大晦日(番外編).
「うわ…活気が凄い…」
「…お前一人で行ってこいよ」
「え!? この中にっ!?」
「体験したいつったのは、お前だろ」
神田と二人、有名なその大通りを細い路地から覗き見る。
確か…タイムズスクエアだっけ。
あまりの人の多さに右も左も前も後ろも、何処を見ても混雑した人、人、人。
…この中に入るのは、かなり勇気が要る気がする。
一瞬、コタツとみかんを欲したくなったけど…偶にはこういう賑やかな年越しをするのもいいよね。
…多分。
「えっと、じゃあ…ちょっと行ってき──…うわわ!」
「おいっ!?」
いざ群集の中に片手を突っ込んだかと思えば、物凄い波にあれよあれよと巻き込まれてしまった。
す、凄い熱気…!
「む、む…ぉぉ…これが…っ」
本場アメリカということもあってか。周りはガタイや身長のある人ばかりで、あちこち押されながら群集の中を揉まれていく。
人込みは得意じゃないから、凄く大変だけど…まぁ、人生に一度と思えばこれも思い出の一つになるのかもしれない。
揉まれながらも、見上げた大きなミラーボール。
キラキラと輝くそれに表示されているのは【20分】。
期待が高鳴る。
年越ししたら、この場はどんなふうに活気付くのかな。
今でも充分、ライヴとか行われてるから活気付いてるけど…。
人が幸せな光景を見ているのは嫌いじゃない。
こっちまで幸せな気分を、貰える気がするから。
「…と、いうか」
離れていた時はただの人の群に見えたけど、近くで見るとわかる。
あちこち混雑しているけど、よくよく見れば家族連れだったり恋人同士だったり友人同士だったり。誰かと共に、仲睦まじく今か今かとカウントダウンを待っている。
オープンな国である所為か、人目憚らずイチャついてる恋人さん達もいるけど。
こういう光景は嫌いじゃない。
…ただ、ちょっぴり。
その人達の中で私だけ、一人だっていうのは…寂しいけど。
…まぁ仕方ない──
「月城っ」
「わ…!」
急に強く腕を引かれた。
ぐらりと傾いた自分の頭が、その胸板に当たる。
「なん…っ神田?」
驚き振り返って見えたのは、真っ黒な団服に真っ黒な瞳。
あれ、なんで。