My important place【D.Gray-man】
第15章 12/31大晦日
「見失う前に行くぞ!」
「ま、待って…!」
たちまち暗い夜空を飛行して消えていく歪な機械のようなAKUMAに、高い建物の屋上から迷うことなく神田が飛び降りる。
慌てて背中の荷物を担ぎ直して、その後を追った。
ちらりと見えた遠くのミラーボールの時間は【2時間42分】。
…ああ、折角の大晦日。
こんな日まで仕事尽くめなんて。
コムイ室長、人使いが荒過ぎです。
ドッ!と鈍い音がして、六幻が一直線に振り下ろされる。
「ゲ…ッ!」
脳天を鋭い刃に串刺しにされたAKUMAが、最期の鈍い悲鳴を上げる。
逃げ足の速いAKUMAだから捕まえるのは大変だったけど、速さに定評のある神田だからこそ捕まえて退治までに至ったと思う。
よかった。
「AKUMA破壊達成、任務完了っこれで帰れるっ」
「お前さっきからそれしか言ってねぇだろ」
「コタツとみかんが私を呼んでいるんです」
「年寄りかよ」
あ、偏見。子供だって大人だってお爺さんお婆さんだって皆、みかんは食べます。
そして私の年越しはコタツにみかんなんです。
ついでにちゃんちゃんこなんて着て、まったりできたら最高です。
呆れた顔した神田の顔も今日は気にならない。
早く帰ろう、カウントダウンが始まる前に。
「つっても一時間切ってるけどな」
サラサラと塵に成りゆくAKUMAの残骸を、払うように六幻を振るいながら神田が向けた視線の先。
AKUMAを追って近付いていたらしい、巨大なミラーボールに表示された時間は【34分】。
「…え」
えぇえぇええ!?
「そんな…!」