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My important place【D.Gray-man】

第15章 12/31大晦日(番外編).



「それに──」

「伏せろ!」


 続けようとした言葉は、神田によって遮られた。
 正しくは神田の六幻によって。


「うわ…!?」


 瞬時に鞘から抜いた六幻を、神田が横一直線に振るう。
 反射的に仰け反った私の髪に切っ先が微かに当たって、はらりと数本の髪が暗い空に舞った。

 あ、危ない…!


「チッ外した」

「当たってたら私死んでます…!」

「違ぇよ阿呆、あれだ」


 苦々しく吐き捨てる神田の視線の先。
 どうやら振るった時に放たれらしい、粉雪舞う空を飛行する六幻の技の一つ──"界蟲(かいちゅう)"が狙ったのはそれ。
 追っていた例のAKUMAの姿があった。


「見失う前に行くぞ!」

「ま、待って…!」


 忽ち暗い夜空を飛行して消えていくAKUMAに、高い建物の屋上から迷うことなく飛び降りる神田。
 慌てて背中の荷物を担ぎ直して後を追った。

 ちらりと見えた遠くのミラーボールの時間は【2時間42分】。

 …ああ、折角の大晦日。
 こんな日まで仕事尽くめなんて。


 コムイ室長、人使いが荒過ぎです。






























 ドッ!と鈍い音がして、六幻が一直線に振り下ろされる。


「ゲ…ッ!」


 脳天を鋭い刃に串刺しにされたAKUMAが、最期の鈍い悲鳴を上げる。
 逃げ足の速いAKUMAだから捕まえるのは大変だったけど、速さに定評のある神田だからこそ捕まえて退治までに至ったと思う。

 よかった。


「AKUMA破壊達成、任務完了っこれで帰れるっ」

「お前さっきから、そればっかりだな」

「コタツとみかんが私を呼んでいるんです」

「婆さんか」


 なんとでも言って下さい。
 年越しはいつもコタツにみかんなんです。
 ついでにちゃんちゃんこなんて着て、まったりするのが最高なんです。

 呆れた顔した神田の顔も今日は気にならない。
 早く帰ろう、カウントダウンが始まる前に。


「つっても、もう一時間切ってるけどな」


 サラサラと塵に成りゆくAKUMAの残骸を、払うように六幻を振るいながら神田が向けた視線の先。
 AKUMAを追って近付いていたらしい、巨大なミラーボール。
 そこに表示された時間は【34分】。


「…え」


 えぇえぇええ!?

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