My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ,
「僕に聞くな!!」
女の悲鳴の後、立て続けに聞こえてきたのは…知った男の声。
「どうしたの、李佳(りけい)! シィフ! 二人共…っ」
「いかん! 無闇に触れるな! ウォンと同じになるぞ!」
会話から聞こえる名は、この教団じゃ聞かない名で。
「「……」」
思わず月城と足を止めて押し黙った。
…嫌な予感しかしねぇ。
「…あれって、もしかして」
「行くぞ」
「え、ちょっと。どう聞いたってまともな人の会話…」
そんなのに構ってたらゾンビの餌食になるだけだろ。
騒ぎを聞きつけたゾンビ共は、顔を上げて動きを速め出している。
構わず足を進めれば、躊躇する月城の声が後方から届く。
「あの声ってまさか、アジア支部の──」
「言うな」
「……」
その言葉は聞きたくない。
…つーか、なんであいつらが此処にいんだよ。
「というかあの声、こっちに近付いてきてるみたいなんだけど…」
「…はぁ」
恐る恐る呟くその声に、溜息混じりに振り返る。
月城と見た、長い廊下の奥底。
そこにやがて見えた人影は──…やっぱりか。
「とにかく逃げろぉおおお!!!」
「きゃー!!!」
大量のゾンビを背中に引き連れ、こっちに走ってくる男と女。
アジア支部の支部長。バク・チャンと………知らない女一名。
「やっぱり…! バク支部長!」
「ん!? 其処にいるのは確か…月城か! おお、神田も!?」
「なんで此処に…もしかして、この状況を知って助けに来てくれたとか…!」
「あれが助けに来た姿かよ」
思いっきりゾンビに襲われてんぞ。
おまけにあのテンパり様は、とても状況を理解しているようには見えない。
期待する月城を否定しながら、出口方面から背を向ける。
このままあの大量のゾンビを引き連れて、外に出んのは流石に無理だ。
それこそ被害が拡大して手が付けられなくなる。
「はぁ…」
本当、面倒な奴らばかりだ。
「俺があのゾンビの塊を足止めする。お前はあいつらを援護しろ」
「!…わかった」
頷く月城を確認して、もう一度大量の迫り来るゾンビに視線を変えた。
ったく、手間かけさせんな。