My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ
「まぁでも喧嘩する程、仲が良いって言うし」
「寝言は寝て言え」
「案外、気が合うかも」
「気味悪いことぬかすな」
言葉を交えながら進めるのは、辺りに然程ゾンビがいないからだ。
この分なら、案外簡単に外に出られそうだな。
「でも──」
「なんですかこれぇえええ!!」
その時。未だモヤシ云々うざいことを言ってくる月城の声を遮ったのは、知らない女の悲鳴だった。
「僕に聞くな!!」
立て続けに聞こえた叫びは、今度は知った男のもの。
「どうしたの李佳(りけい)! シィフ! 二人共っ」
「いかん! 無闇に触れるな! ウォンと同じになるぞ!」
会話から聞こえる名はこの教団じゃ聞かないもので、思わず月城と足を止めて押し黙る。
…嫌な予感しかしねぇ。
「あれって、もしかして」
「行くぞ」
「え? ち、ちょっと。どう聞いたってまともな人の会話…」
そんなのに構ってたらゾンビの餌食になるだけだろ。
騒ぎを聞きつけたゾンビ共は、顔を上げて動きを速め出している。
構わず足を進めれば、躊躇する月城の声が後方から届く。
「あの声ってまさか、アジア支部の──」
「言うな」
その言葉は聞きたくない。
つーか、なんであいつらが此処にいんだよ。
「というかあの声、こっちに近付いてきてるみたいなんだけど…」
「…はぁ」
恐る恐る呟くその声に、溜息混じりに振り返る。
月城と見た、長い廊下の奥底。
そこにやがて見えた人影は…やっぱりか。
「とにかく逃げろぉおおお!!!」
「きゃー!!!」
大量のゾンビを背中に引き連れ、こっちに走ってくる男と女。
アジア支部の支部長バク・チャン。と……知らない女一名。
「やっぱり…! バク支部長!」
「ん!? 其処にいるのは確か…っ月城か! おお、神田も!?」
「なんで此処に…っもしかして、この状況を知って助けに来てくれたとか…!」
「あれが助けに来た姿かよ」
思いっきりゾンビに襲われてんぞ。
おまけにあの慌て様は、とても状況を理解しているようには見えない。