My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ
使徒を作る実験がどういうもんかは知ってる。
ただ似た境遇だからと、特別な感情をそこに寄せるつもりはない。
傷の舐め合いなんて嫌いだ。
俺は俺で、月城は月城。
こいつが背負ったもんの重みはこいつにしかわからないし、俺が抱えてるもんの重みは俺にしかわからない。
ただ。
過去を聞き出す気はねぇが、こいつが腹割って話そうとするなら…その時は耳を傾けようと思った。
傷の舐め合いじゃなく。
こいつが拙いガキみたいな声で、痛いと吐いた言葉。それを聞き逃したくないと思ったから。
そこに明確な理由はない。
相変わらず、それは靄がかかったような曖昧な思いだ。
それでも不思議と、前のような苛立ちはなかった。
「にしても、お腹減ったな…」
廊下の柵に腕を乗せて、月城が力なく項垂れる。
そういや昨日の夜から、なんも食べてねぇな。
「ジェリーさんの朝ご飯定食が食べたい…」
「食いもんの話なんざしたら余計に腹減るだろ」
「だって──…あ。」
顔を上げた月城が続けようとして、不意に声を止める。
その視線の先は大廊下。
「見て、ティエドール元帥が食堂の方に向かってる…っ」
「やっと行ったか…」
食堂へと続く廊下の奥に消えていく姿に脱力する。
「いいな…食堂…」
「言ってる場合か。今のうちにさっさと此処から出るぞ」
「…うん」
恨めしそうに食堂に続く廊下を見た後、月城は渋々頷いた。
今行ったって、ジェリーの飯が食える訳じゃねぇだろ。
「食い意地張ってんなよ」
「アレン程は張ってないよ。普通です、普通」
「…なんでそこでモヤシが出てくんだよ」
「なんでって、ただの例えで…え、それも駄目なの?…本当に仲悪いんだね、二人」
周りを確認しながら、一階廊下に降りる。
月城の口から出てきたモヤシの名に顔を顰めれば、まじまじと感心するような目を向けられた。
あんな奴と仲良くする義務なんてねぇだろ。