My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
(代償…か)
1のものより10のもの。
一人より大勢。
救える道があるのなら、その者の犠牲は仕方のないものなのか。
綺麗事なんて言ってられない。
レニーのその言葉は、コムイも重々理解していた。
誰一人傷付けずに終えられる戦争などない。
"平和"と掲げられる世界の下には、必ず藻掻き苦しみ消えていった命がある。
そしてそれは、ノアと判明してしまった雪にも当てはまってしまうことなのか。
「……」
コムイは一層眉間の皺を深くした。
「……一つだけ聞かせてくれ、レニー」
先程まで荒げていた声を静めた、力のないバクの声が響く。
「先程言った"残されていたセカンドの肉塊"とは…一体何処から入手したのだ」
ALMAの暴走により、セカンドの器だった全ての肉体は破壊された。
破壊したのは、同じセカンドであったALMA自身だった。
移植した脳の記憶が蘇り、自分の立場を理解したが故に暴走したALMA。
その怒りの矛先が研究員や鴉に向くのはわかるが、何故同胞でもあった、まだ目覚めぬセカンドの器達まで破壊したのか。
その理由は今でも謎のまま。
恐らく全てのものをALMAは滅さなければ気が済まなかったのだろうと、見境のない殺生であったと後に判断された。
そしてそんなALMAもまた、暴走を止める為にYUの手で破壊し尽くされた。
故に現在生存しているセカンドの器は、神田ユウ一人のみ。
彼以外に、もうあの実験での成果は残されていない。