My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「コムイ…まさかもう──」
「ああ。ルベリエ長官が教団に来ている。バク支部長とレニー支部長も一緒だそうだ」
足早に地下通路を進むコムイの背中にかかる、ラビの声。
早口に返しながらコムイは振り返らない。
「では室長、雪は…っ」
「雪くんのことは一旦保留だ。マリくんは他エクソシスト同様、教団での待機だ。いいね」
同じにマリの問いに顔も向けずに命ずるコムイには、予断を許さぬ雰囲気が漂っていた。
無線機越しのルベリエの声はラビの耳には届かなかったが、コムイの表情と言葉で何を言われたかは大方察しがつく。
(…やっべぇな、これ)
どうにも嫌な予感しかしない。
土下座をした雪が最後にコムイに見せた顔は、不安げなものの僅かにほっとしたような安堵の表情だった。
そんな雪に後ろ髪引かれる思いで一度だけ振り返り、ラビもまた足早にコムイを追った。
どうか、その身を投げ打ってでも求めた、彼女の一つの我儘が通らんことを。
そう願わずにはいられずに。