My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
しかしルベリエはコムイとは違った。
『"敵"でなければ"味方"だと? そう言える訳でもないでしょう。いや、そちらの方が言えないはずだ』
「……」
『とにかく一度戻りなさい。貴方には話さねばならないことがあります。レニー支部長も待っておられる』
「…レニー支部長?」
(何故レニー・エプスタインが?)
「彼女が其処にいるんですか」
『ええ。バク支部長と共にね』
「…バク?」
(なんでバクちゃんまで…)
北米支部のレニー・エプスタインと、アジア支部のバク・チャン。
何故その二つの支部の支部長だけが、教団に呼び出されているのか。
理由は全く掴めなかったが、二人の関係性には思い当たる節があった。
チャン家とエプスタイン家。
中国とアメリカ、それぞれ金と権力を持った二つの大きな一族が犯した、過去の教団の黒い負の遺跡。
それが"人造使徒計画"。
セカンドエクソシストである神田ユウを造り上げた、あの禍々しい実験だった。
(…嫌な予感がする)
過去の教団の歴史を思い出し、コムイの眉間の皺が深く刻まれる。
どうにも良いことではなさそうだと、長年室長を務めた勘が警告を鳴らしていた。
「…わかりました、すぐ司令室に戻ります。長官もそれまで其処で待機頂きますよう、お願いします」
『ええ、いいでしょう』
くすりと微かに笑う声を最後に、プツリと呆気なく切れる回線。
それを最後に、コムイは耳から無線機を毟り取った。