My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
その想いの強さを悟ると同時に、ラビは思い知らされた。
やはり自分では駄目なのだ。
強くて脆い、彼女の心を支えてやれるのは自分ではない。
(……ユウじゃなきゃ駄目さ)
同じに真っ直ぐな想いを抱いた、彼だ。
「んじゃ、早くユウにこのこと話さねぇとな」
地下の暗く長い通路。
先を歩くコムイの背中に、ぱっと顔を上げて声を掛けるラビの表情は、もういつも通りのものだった。
雪の想いの強さを知って、胸が痛んだのは事実。
しかし彼女を助けられるならば喜んで身を退こう。
その命に代えられるものなどないのだから。
「…全く持って修行が足りんな、お前は」
そんなラビに、やれやれと隣で歩いていたブックマンが溜息混じりに肩を下げる。
ブックマンとして、傍観者として、雪の記録に来たというのに。
感情のままに行動してしまうラビの雪へ抱いた想いは、ブックマンも薄々と感じていた。
「うっせぇな、わかってんさ」
「わかってるなら行動を慎め馬鹿モンが」
「へーへー。それよりマリはなんて言ってんさ? コムイ」
「無視するでない!」
「あでっ! 痛ってェなこの暴力パンダ…!」
後ろでぎゃあぎゃあと殴り合うブックマン一族に小さく溜息を溢しながら、コムイは耳に取り付けていた小型無線機に手をかけた。
その先は、先程ラビが口にした人物に繋がっている。
「マリくん。どうだった? 彼女は」
「…はい」
反応は無線機の向こう側と、そしてすぐ傍から聞こえた。
暗い地下通路の片隅に、待機していたのは大柄な盲目のエクソシストであるマリ。
その肩には彼専用の通信ゴーレムが乗っていた。