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My important place【D.Gray-man】

第43章 羊の詩(うた).


 ✣ ✣ ✣ ✣

 ガチャン、と重い錠がかかる。
 地下の冷たい独房から出て、鉄の分厚い扉が閉まる様を目に映しながら、ラビは微かに息をついた。

 雪との面会はたった数十分の出来事。
 それはあっという間のようで、密度はとてつもなく濃く感じるものだった。


 コムイから雪の正体がノアであると聞かされた時は、心底驚いた。
 しかし頭の回るラビは、過去の雪の気になる行動が、それにかかるものだとすぐにピンときた。

 アレンの14番目のことを知らずとも、ノアのことを何かと知りたがっていたのは、雪自身が抱えていたからだ。
 その身に、ノアメモリーを。

 そしてそのことを教団で知っている者は一人もいなかったと、コムイから伝えられた。
 一人、ノアであることを隠して教団に潜伏していたとなると、敵として潜入していたのだろうか。
 そんな嫌な予感は振り払えなかったが、鎖に繋がれた無防備な雪を目の当たりにしてラビの思いは変わった。


(あれが雪の素の姿なんさな…)


 裸足で布切れのような白い囚人服だけを身に纏った雪は、その姿通りの裸に近い心を見せてきた。
 コムイに縋るように詰め寄り、家族を返せと泣き出しそうな声で詰り。
 かと思えば、神田に一度でいいから会わせて欲しいと、額を地面に擦り付けて土下座までして見せた。

 どれもラビにとって初めて見る姿で、衝撃的なものだった。
 強い自分の思いを主張する、本音を丸出しにした彼女の姿は。

 ただただ驚きと新鮮に満ちていて、


(…いってぇな)


 それは、胸に突き刺さった。
 目を逸らしたくなる程に、痛かった。

 それ程教団が過去に彼女に強制した行為は、その心を引き裂いていたのだろう。
 それでも尚、それを呑み込む程に強い想いを同じ教団の者に抱いた彼女の心に。

 生半可な想いじゃ抱けないものだろう。
 それこそ"敵"と認識していたら、抱けない想いのはずだ。

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