My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「…ありがとう、ございます」
深々ともう一度、感謝の言葉を込めて頭を下げる。
またも耳に流れ込んできた溜息は、今度は微かなもの。
「うん。君の本気は伝わってきたから…もういいよ、顔を上げて。雪くんに土下座させたなんて、それこそ神田くんに知られたら怒られそうだしね」
最後の言葉は調子の軽いもの。
この重い空気を変える為に室長は言ってくれたんだろうけど、私の心は晴れなかった。
…怒ってくれるのかな。
前は気に喰わないことがあると、よく私を罵倒して殴ったり叩いたりしてきたけど。
今はそれすらされなくなってしまったら、と思うと…怖い。
「それに礼を言うのはまだ早い。とにかく神田くんと話をしてくるから。それまで、君は引き続き此処で待機だ。いいね」
「はい」
顔を上げる。
蝋燭に照らされ橙色に映る室長の顔は、いつも通りとまではいかなくても…優しい顔をしていた。