My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
可か否か。
この場で答えを出せるのはコムイ室長だけ。
「……」
彼のその沈黙は、長いものだった。
長くて重い。
その空気に耐え切れなくなりそうになる。
「……はぁ」
やがて耳に入り込んできたのは、彼の諦めたような溜息。
「わかったよ」
ぽつりと落ちてくる小さな声は、まさかのもので。
弾けるように顔を上げれば、見えたのは眉を下げて深々と溜息をつく室長の姿だった。
「女の子に土下座させる趣味なんてないからねぇ僕。そこまで頼まれちゃあね……仕方ない」
「じ、じゃあ…っ」
「でも約束はできない」
思わず上半身が上がる。
だけど室長は難しい顔のままだった。
「神田くん自身が雪くんの希望を承諾するかどうか、それがまずわからないし。会わせられると断言はできないよ」
…そう、だ。
室長に言われて、私はユウの気持ちを全く考えてなかったことに気付いた。
ユウは、どうなんだろう。
私が話したいからって、耳を傾けてくれるんだろうか。
…わからない。
「彼が拒否すれば連れてくることはできない。その時は諦めてもらうしかない」
「……」
「それに勿論僕やブックマンも神田くんに同行するから。一対一の空間は作ってやれない。君達を同じ空間に入れることもできない。…わかったね?」
「………はい」
頷きたくはなかった。
ユウが私を拒否してしまえば、もう何も伝えられなくなってしまう。
でもきっとこれが最後の可能性だ。
なんでもいい、ユウに会えるなら。
藁にでも縋る思いだった。