My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「なら…君はいつからノアに…? その変化に気付いたのはいつ頃なんだい?」
「……」
「それが最近ならば、状況もまた変わってくる。君がノアであることを隠して間もなければ、時間の問題にもできる」
ノア化…いつから、だっけ…。
あれは確か…額に変な十字傷ができたのがきっかけだった…。
ユウとのAKUMA討伐任務で…ドイツの廃れた墓地に赴いた時、だ。
でもあの時はノアの兆候だとは気付かなかった。
気付いたのは、アレンの退魔の剣をその身に受けた時。
それはイギリスの墓地での任務中だった。
……もう大分前のこと。
最近の出来事じゃない。
「教えてくれるかい。君のノアのことを、詳しく」
「……」
顔色をそっと伺うように、優しく問いかけてくる。
だけど室長のその声に…私は返事を返せずにいた。
…言いたい。話したい。
室長はきっと、ちゃんと聞いてくれる。
私の未来を守る為に、最善の道を探してくれるだろう。
さっきの真っ直ぐな言葉を耳にして、疑う余地はない。
──でも。
「……」
「…雪くん…黙ってたんじゃ、何もわからない」
「………なら…」
「うん?」
「…なら……っ………ユウを、呼んで下さい」
ぎゅっと両手の拳を膝の上で握る。
「ユウを、この場に呼んでくれたら…話します」
私のノアのこと。
ずっと誰にも言わずに心の奥底に抱えていたもの。
それを真っ先に伝えると、約束したのは彼だから。
理由も何もわからないのに、それでも迷うことなくユウは待つと言ってくれた。
いくらでも待つって、私が不安に駆られて弱気になる度に心の支えをくれたんだ。
そんなユウに、あんな形でノアのことを曝け出して…きっと傷付けた。
だから、目を逸らされた。
敵のように扱われて、拘束された。
私がユウを傷付けた。
…もう傷付けたくない。
黙ってたこと、許してもらえないかもしれないけど…もう、私のことを見てもらえないかもしれないけれど。
せめてこの約束だけは守りたい。
ノアのことを話すなら、一番に伝えたい人は他の誰でもない。
──ユウだから。