My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「ティムキャンピー。映像を頼む」
コムイの声に反応して、ティムキャンピーが尖った歯の羅列した口をかぱりと開く。
その咥内からホログラムのように宙に映し出される、霞んだ半透明な映像。
しかし確かにそこに映し出されていたのは、巨大なレベル3のAKUMAから攻撃を受け、ノア化までに至る雪の姿だった。
外野として見ても、独特の褐色の肌と金色の目、そして前髪の隙間から覗く聖痕。
それは誤魔化しようのない姿だった。
(こんなことになってたんだ…)
ノア化した時は、とにかく頭が痛くて痛くて、周りに構う余裕なんてなかった。
映像の中では、頭を抱える自分の体から、稲妻のような光が生まれ膨張し放っている。
こんな有り様になっていたなんて。
雪は息を呑んだ。
構う余裕なんてなかった。
頭の中は痛みと知らない声と別の景色で埋め尽くされていたから。
「オハヨウ」と知らない声が聞こえた。
誰かに呼びかけられて、頭に浮かんだのは金色の光。
(…あ…れ…?)
そういえば、あれはなんだったのだろう。
酷い頭痛の悲鳴で、隅に追いやられていた景色の記憶を引っ張り出す。
そういえば、と思い出した。
ジャスデビにノアメモリーを流し込まれた時と同じだ。
あの時は幼い双子の姿が目の前に映し出されていた。
今回も同じ。
何か、誰か、この目で見た気がする。
優しく温かい、懐かしさを感じる光景を目にした気がする。
あれはなんだったのだろう。