My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
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「……」
新本部へと移り変わり、月日もそれなりに経った。
もう見慣れた新しい司令室のドアを前に、雪は体が緊張で強張るのを感じた。
幾度となく潜ってきたドアだが、こんなに緊張したのは幼い頃にクロスに連れられ、初めて司令室を訪れた時以来だ。
拳の中の汗が滲んで蒸れる。
「室長、ハワード・リンクです。月城雪を連れて参りました」
『入って』
中から届いた声は、普段と変わらぬ落ち着いたコムイの声。
リンクの後に続いて司令室へと踏み入れる。
旧本部の時は足の踏み場もない程に、床には散らばった沢山の書類で埋め尽くされていた。
しかし新本部へ移り最初こそ汚かった書類だらけの床も、やがては綺麗に一掃された。
室長補佐として規律に厳しいフェイの影響力のお陰だろう。今ではきちっと部屋の隅々まで、綺麗に整理整頓されている。
上品で落ち着いた都鼠色の絨毯を踏みしめる。
しっかりと地に足を付けているはずなのに、一歩ずつ踏み進めることがまるで雲の上を歩くように、雪には心許無いものだった。
大きな窓硝子を背に、座り心地の良さそうな本革チェアーの室長席に腰掛けているコムイ。
その手前には漆のように光沢ある大きな机。
更には同じく本革の大きなソファーが置いてあり、他者も寛げる空間となっている。
其処に腰掛けている黒尽くめの二人が雪の視界に入り込み、つい目で追った。
白い頭と黒い頭。
左右対称のような色合いを持つアレンと神田。
二人の目は雪へと向けられていて、一瞬視線が重なる。
どこか不安の残る表情で目を向けてくるアレン。
感情の見えない無に近い表情を浮かべているのは神田。
じわりと、雪の掌の中の汗が増した。