My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「もしかして、まだ怪我が響いたりしているのか?」
「…あ…うん。ちょっとだけ」
マリ相手に下手な嘘はつけない。どう答えるべきか雪が迷いを感じていると、心配そうにマリが問いかけてきたのは的外れな言葉だった。
驚きと共に拍子抜けしてしまう。
もしかしてマリは自分のノアの事情を知らないのだろうか?
気絶していた間のことはわからない。
思わずリンクに目を向ければ、彼は静かに首を横に振った。
その反応だけで充分だった。
マリは恐らく、この事態を把握していない。
「無理はするなよ」
「うん。でももう大丈夫だから。ありがとう、マリ」
その返答に偽りはない。
マリの優しい性格が、今は救いだと思った。
話を合わせるように頷いて笑顔を返す。
早々にこの場から立ち去ろう。
マリにこれ以上不審がられる前に。
「ああ、それと」
再び進めようとした雪の足を止めたのは、会話を繋げるように続くマリの声。
「神田には会ったか?」
またも問われたのは予想外のこと。
しかしその名に雪の口は、今度はピタリと閉じてしまった。
「孤児院の結界が解けてからはバタバタで話せなかったんだが…あいつの様子が少し可笑しくてな。アレンもそうだったんだが、雪が怪我したんだ。それが原因かとも思って」
「……どんなふうに…可笑しかったの?」
声が震えそうになるのを抑えて、気付けばそう問いかけていた。
気絶していた間のことはわからない。
最後に覚えているのは、ノア化した自分の姿を見て声もなく驚いていた神田の姿だけ。
言葉は一つも交わせていない。
「会えていないのか?」
「…うん」
会いたい。
けれど会うのが怖い。
どちらとも取れない思いに心が揺れる。