My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「まぁそう泣くなよっミランダ! クロウリー!」
「きゃ…っ」
「い、痛いである!」
めそめそと啜り泣く声が木霊していた病室に、突如響く威勢の良い声。
ばしばしと二人の背中を叩いて励ますのは、マリと共に任務から帰ってきた科学班のジジだった。
「室長に報告したらよ、前よりハイパーな指を作ってやるって意気込んで」
「結構だ」
無精髭の口元から大きく響く笑い声。
と共に告げられた言葉を遮るように、マリは真顔で即答した。
なんだ、ハイパーな指とは。
そんなもの許したら、腕ならぬ指にサイコガンでも付けられそうな気がする。
あれが似合うのはコブラだけだ、自分は1mmたりとも歓迎しない。
「んだよ~折角義指付けんだからよ。スーパーなやつ付けたいだろ?」
「結構だ」
(スーパーってなんだ)
名前からしてもう嫌な予感しかしない。
だからと言って聞くと後悔しそうで、それ以上は突っ込めない。
顔を渋くするマリに、なんだよと抗議を上げるジジは不満顔。
その不満顔はこちらが浮かべたい程だと、マリはつい溜息をついた。
何故こうも科学班の開発物は、一癖も二癖もあるものが多いのか。共に教団で戦っている大事な仲間だが、時に理解のできない人種だと思う。
「──?」
「ん? どうしたマリ」
その時、呆れるマリの耳に届いたのは聞き覚えのある心音だった。
病室のドアの向こうへと盲目の目を向ける。
聞き覚えがある、馴染んだ心臓の音。
しかしその心音の混沌とした気配に引っ掛かった。
「…雪?」
思わずその名を呼べば、つられてドアの向こうの廊下へと顔を向けたジジが目を瞬く。
其処にいたのは、マリの呼んだ通り。ファインダーの彼女の姿だった。