My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「…ひっく…ぅ…ッ」
「うぅ…ッ…ぐす…っ」
教団の医療病棟の一室。
うるうると、大きな瞳の縁に溜まる零れ落ちそうな透明な雫。
同じくめそめそと、既に零れ落ちてしまった雫で頬を濡らしながら啜り泣く声が響く。
とっくに成人した身でありながら、ベッドの傍でぐすぐすと涙を流す男女二人に、マリは苦笑混じりに微笑んだ。
「たかが指の二本くらい、なんてことないさ。二人が気負うことじゃない」
「でも…っわ、私がいればっイノセンスで時間を止められたのに…!」
「私がいればAKUMAウイルスを吸い出せたのに…っ悔しいである…!」
レベル4との戦闘で左手の二本の指を失くしてしまったマリ。
しっかりと包帯で巻かれ三角巾で固定された左腕を見て、ミランダとクロウリーは更に涙を滲ませた。
マリの怪我の悲報を聞き、すっ飛んできたのは同じエクソシスト仲間である二人だった。
自分がその場にいれば、マリは指を失うことなどなかったのに。
救いの方法があったからこそ、思えば思う程涙は溢れ後悔が募る。
そんな泣き虫な大人二人に、マリはもう一度微笑み返した。
「ありがとう、二人共」
心の底から礼の言葉を口にして。
そう親身に気にかけて、涙を流す程に思ってくれる仲間がいるだけで、マリには充分だった。
指は失ってしまったが、イノセンスが扱えなくなる訳ではない。
打開策は幾らでもあるだろう。