My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
自分の体を抱いてわかること。
ギシギシと痛む包帯で覆われた体は、夢などではないと訴えてくるかのようだった。
マダラオの放った大量の札で拘束された直後、起きた爆破。
体を纏っていた高圧エネルギーの光が守ってはくれたが、ダメージを軽減するだけで無傷ではいられなかった。
その一連の出来事は、決して夢などではないと。
「何か仕出かす前に、早く拘束なさって」
辺りを不安げに見渡す雪の姿に、危険を感じたのか。
テワクがリンクを冷たく急かす。
〝拘束〟
隙間なく重なり体中に張り付き、呼吸すら困難にしていた鴉の札。
同時に体が大きな鉛の塊と化したように重くなり、忽ち動かなくなってしまった。
そんなマダラオの手により拘束された時のことを思い出し、雪は顔を強張らせた。
その反応を目にして、リンクは静かに首を横に振る。
「いや、拘束はしない。その為にお前達が遣わされたのだろう。彼女はこのまま連れていく」
「何を生温いことを…っ」
「良いだろう」
「兄様っ?」
「私が見張る」
コツコツと病室の床を歩む足音。
リンクもそれを了承したのか、雪のベッドの周りを囲っていた札が道を作るように左右に散らばる。
ベッドのすぐ傍まで歩み寄ったマダラオが、薄い顔布の向こう側から鋭い切れ目を雪に向けた。
「来い」
促される低い声。
しかしベッドから下りる素振りは見せず、雪は恐る恐るマダラオを見上げた。
「……ユウ…アレン達、は…? 何処に──」
「その質問に答える義はない。黙って従え」
「……」
有無言わさない言葉の圧に、それ以上は問いかけられなかった。