My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
この雁字搦めに縛られてしまった彼女の心を解くには、どうするべきか。
「…呆れた? 私のこと」
考え込んでいると、溜息をついて黙り込んでしまったティキに、悪い方へと思考が傾いたのだろう。
反応を伺うように、小さな声で雪が恐る恐る尋ねてくる。
不安な表情。
そんな雪の顔にティキは目を丸くした。
こうして反応する分、雪は自分の存在を気に掛けているのだろうか。
「なんでそんな顔すんの」
「…だって…ティキは私の為に、傍にいてくれるって…そう、言ってくれたのに…」
「…自分の為だったら、なんでも申し訳なく思うわけ? 雪は」
「それは…」
俯き加減にしょぼくれる雪の顔を、寄せた顔を傾け、下から覗き込むようにして問いかける。
暗い世界で光もないのに、何故かはっきりと見えるティキの姿。
それは金色の鮮やかな瞳も同じで、視線が重なり雪は一瞬言葉を濁した。
「…そうじゃないよ」
しかしそれは一瞬だけ。
閉じた口を開いて、顔を上げてしかとティキをその目に映す。
「でもティキは、偽善じゃなくて本心で言ってくれたでしょ。私の為にって。だから…その…なんか、上手く言えないけど…もやもやするって言うか…すっきりしないと言うか…」
最初ははっきりと紡いでいた声が、段々と自信なさげに迷い萎んでいく。
言葉通り、本人も上手い表現が見つからないのだろう。視線を彷徨わせながら、もごもごと言葉を濁す。
そんな雪の姿に目をまぁるくした後、ティキはくすりと一つ笑った。
「え、なんで笑うの。まさかまた阿呆だなって思った?」
「や。ちげーよ」
「じゃあ何」
「可愛いなって」
「…は?」
予想外の言葉だったのだろう。むすっと不満顔を向けてきていた雪の表情が固まる。
その固まった顔にもう一度、ティキは笑ってみせた。
「雪のそういうところ、可愛いと思うよ」