My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「…なんで謝んの?」
「だって…」
「迷惑かけたかなんて、わかんねぇだろ?」
「でも、私の為に何かしようとしてくれてたんでしょ。それはわかるよ」
俯いていた雪の顔が上がる。
真っ直ぐに向けられた言葉も瞳も、迷いがない。
成程、とティキは内心納得した。
覗き魔の兄弟が言っていた、雪の持つ"真っ直ぐさ"。
これもきっとその一つなのだろう。
ふとティキの口元が緩む。
「半分当たりで半分外れだな」
「え?」
「迷惑だなんて思っちゃいねぇよ。俺、面倒なことには極力関わりたくねーもん」
ロードの人間として通っている学校の宿題を手伝ったり、千年伯爵の買い物の荷物持ち要員で遠出したり。
誕生日やらクリスマスやら、行事の度に騒ぎ立てる彼らの元にも、渋々だって足を向ける。
面倒事でも手を貸し付き合うのは"家族"だからだ。
頼まれれば、なんとなく嫌とは言えない。
それでも顔には思いっきり、嫌々な雰囲気が表れているのだが。
そして今この場にいるのは、ワイズリーに頼まれたからではない。
ティキ自身、興味があったからだ。
ノアでありながら教団に身を置いている雪の心に。
「だから謝んなよ。俺もつい意固地になって責めちまった。悪かった」
よく見せていた、整った顔立ちを惹き立てるような綺麗な笑顔ではない。
苦笑混じりの人間味のある、少しぎこちない笑み。
そんな笑みを見せて素直に謝るティキに、雪はなんとなしに、ああと思い出していた。
この人のこういう雰囲気は落ち着く。
何よりも誰よりも"人間らしい"。