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My important place【D.Gray-man】

第42章 因果律



 言葉の意味をきちんと理解せずとも、ティキの雰囲気で責められていることは理解したのだろう。
 暗い表情で俯く雪は、何も言い返そうとはしなかった。



「…ま。今回はタイミングも悪かったからな」



 そんな雪の態度に、なんとなくフォローのつもりでティキは言葉を繋ぐ。



「タイミング…?」

「丁度シェリルの奴に捕まっててさ。やれ身嗜みだやれ作法だ事細かに叩き込まれてたんだよ。肩がすげー凝った」



 ワイズリーと明朝に言葉を交わして、必要な記憶を見せてもらった後はすぐにキャメロット邸を去るつもりだった。
 なのに運悪く屋敷の主に見つかってしまい、あれやこれやと身嗜みの悪さを注意されて、そのままワイズリーと共に強制連行された。
 勉強会と言う名の説教地獄に。



「ワイズリーがそりゃもう凹んでたぜ。気付いていれば止められたのにって」



 頭を抱えて盛大に落ち込んでいた、我らが覗き魔の兄弟を思い浮かべる。
 あれは流石に憐れに見えた。
 それだけ慎重に雪の周りに気を配っていたのだから、ショックを受けるのも仕方のないことなのかもしれない。



「止める…?」

「ノア化。つってもわかんねぇだろうけど」

「……」



 ガシガシと頭を掻きながら溜息を零す。
 ちらりと横目に見れば、やはり理解はしていないのだろう。雪は難しい顔で俯いていた。



「…ごめん」



 なのにその口から零れ出たのは謝罪。
 思わず頭を掻いていたティキの手が止まる。



「ティキのことも…ワイズリーのことも、憶えてるよ。今は、ちゃんとわかる。前に助けてくれたでしょ…頭が痛くて、割れそうになった時…。…でも…わからないことも、色々あって…ごめん。私がこんなだから、色々迷惑…かけたんだよ、ね…」



 難しい顔で俯いたまま、言葉を選ぶように拙くも伝えてくる。
 その必死にも見える言葉の羅列にティキは目を見張った。

 全てのことを理解はしていない。雪の頭の中は朧気だ。
 それでも自分やワイズリーに自ら歩み寄ろうとしている。
その姿に偽りは見えなかった。

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