My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
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「まぁまぁ…凄い笑い声ねぇ…」
「なんだろ?」
教団の建物の一角。
丁寧に芝が刈られた庭に置かれたベンチに座る、二つの人影。
茜色の夕日が照らす影は濃く長く、ベンチの後ろへと伸ばしていく。
すぐ後ろの建物の窓から聞こえてくる爆笑の渦とガルマーの悲鳴。
それを耳にしながら、二つの影は不思議そうに首を傾げた。
大人の影と子供の影が一つずつ。
ハースト孤児院の院長とティモシー。
「ねぇ、ティモシー」
「んっ? 何?」
「マシューとエヴァの熱がやっと下がったの。これで皆もう心配ないって、お医者様も言って下さったわ」
AKUMAのダークマターの影響で発熱してしまった孤児院の子供達。
しかし的確な教団の医療班の治療により、院長も含め早々とその症状は落ち着かせることができた。
最後に残っていたあの二人の容態が回復すれば、もう治療は終了となる。
「オレが皆を元気にしねぇと承知しねぇぞって、ビシッとかましてやったからねっ!」
「まぁそうなの? ビシッと?」
「うんっビシ~ッて! エクソシストって偉いんだぜっ!」
早速とティモシーの体に合った子供サイズの団服を科学班に作製してもらい、アレン達と同じ真っ黒なその服に身を包むティモシーは、もうどこから見ても教団の一員。
「見てホラ! この服も! すっごい金掛かってんだよっ」
そんな自分の姿を自慢げに、そして誇らしげにティモシーは院長へと胸を張って見せた。
自分はもう怪盗という犯罪者ではない。
正式な教皇の象徴であるローズクロスを背負った、エクソシストなのだ。
「飯も豪華で食い放題だしさっ風呂なんかめっちゃデカイんだぜっ!」
弾む声で次々と自慢話を始めるティモシーに、にこにこと笑顔を向け続ける院長。
まるで自分のことのように嬉しそうに笑う。
そんな院長の笑顔が、ティモシーは何より好きだった。
ずっとそうやって笑っていて欲しかったから、怪盗Gをも作り出したのだ。
方法は随分と変わってしまったけれど、孤児院を救い院長に笑顔を取り戻させたことには変わりない。
そんな自分が誇らしくて、ティモシーの声は益々弾んだ。