My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
嫌いだった。
エミリアには好意を抱いていたけれど、ガルマーのことは心底嫌っていた。
自分の世界を壊したきっかけはガルマーだ。
父親の束縛からは解放されたけれど、幼いティモシーにとってその解放は恐怖でもあった。
身内は誰もいない、知らない大人達に囲まれる恐怖。
勝手に世界を壊して、勝手に孤児院に連れて行かれたかと思えば、"新しい家"なんて勝手に決めつけられて。
けれど彼は彼なりに大人として責任を感じていたのだと知ると、不思議とその思いは呆気なくティモシーの胸の内から薄れていった。
知れば変われる。
思いを改めることもできるのだ。
それはアレンの説教で教えてもらったこと。
「ガルマー…」
だが。
「それは…」
(うん、)
「無理だって」
「無理よ」
「無理かな?」
「無理だろ」
「無理でしょう」
「無理だな」
「ぐはぁッ!」
(そんな駄目出ししなくたって…!)
あっさりはっきり呆気なく。ガルマーを全否定したのは、ティモシーやエミリアを始めとする、その場にいたエクソシスト組全員。
容赦のない本音の責め立てに、更にずんっとガルマーの背中に暗い影が帯びて大きく凹んだ。
そこまで言わなくたっていいんじゃないのか。
「や、その心意気は汲むんですけどね」
うんうんと腕組みしながら頷くはアレン。
「一般人にAKUMAの相手は…」
苦笑混じりに首を傾げるはマリ。
「貴方が傍にいてもなんの役にも立たないと思いますが?」
淡々と目も合わせず現実的な事実を口にするはリンク。
「つか懺悔なら教会でやれ」
そしてドスッ!と最後にガルマーの胸に言葉の矢を突き刺したのは神田だった。
「…ソコマデ言ワナクタッテ…イイジャネェカ…」
ちょっと大人としての責任を全うしようとしただけなのに。
ちょっと大人として格好良くいようとしただけなのに。
なんで否定されなきゃならないのか。
間違ったことなど言っただろうか。
(言ってねぇだろ寧ろ正論だろ…!)
とは思うけど言えない。
また全否定されると今度こそ心がぽっきり折れてしまいそうな気がする。