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My important place【D.Gray-man】

第42章 因果律



「エミリアはあの子を引き取ろうと言ったが、あのおでこを見る度申し訳なくて…俺を恨んでる気がして…此処へ預けたんだ」


 ぼそりぼそりとガルマーが呟く声に、アレンは口を挟まず静かに耳を傾けた。
 孤児院のドアの隙間から覗いたエミリアもまた、それに気付き言葉を止める。


「あの時、俺が突入なんてしなけりゃ…」


 ティモシーの額の謎の宝石は、自分が作ってしまった過ちと罪の形だ。
 ぐっと握った両手に額を押し付けて、ガルマーは搾り出すように声を漏らした。


「なんとか見逃して貰えねぇか…あの子を連れていくのは…」


 それはここ数日で初めて見せた、ガルマーの弱気な姿勢だった。
 そして縋るような願い。

 リーバー達から説明を受け、ティモシーの額がイノセンスであるということを知った。
 黒の教団に連れて行かれれば、待っているのは戦いの日々。
 あんな幼い子にそんな危険な真似はさせられない。
 ぐ、と唇を噛み締めガルマーが顔を上げる。


「俺が今度こそ傍にいて、AKUMAからティモシーを守る…!」


 真っ直ぐに前を見据え決意を口にする表情に、迷いは見当たらなかった。


「パパ…っ」


 そんな父の姿に、エミリアが目元を潤ませながら自分の口元に手を当てる。

 エミリアのすぐ後ろ。
 いつの間にか傍で聞き耳を立てていたティモシーもまた、驚いた顔でガルマーの背中を見つめていた。

 初めて聞いた彼の本音。
 そして彼の決意。

 なんとなく負い目を感じているだろうことは知っていた。
 でも初めてだった。
 こんなにはっきりと、彼の口から"守る"と告げられたのは。

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