My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
この数珠はユウに預けられたもの。
だけど。
『それはお前に預けたんだ、今更返せなんて言わねぇよ。大事にしたけりゃしてろ』
いつものぶっきらぼうな言い方で、でも確かにそうはっきり言ってくれた。
私の気持ちを理解して、受け入れてくれた。
そんなこと言われたらさ…もう預からせてるんじゃなくて贈呈したみたいなもんだよ、ユウ。
これは預かってるもの。
私のものじゃない。
──"私のものじゃない"
その言葉を思い浮かべると胸に僅かに引っ掛かる"何か"。
でも今はその心もどこか晴れやかだった。
…きっとユウのあの言葉のお陰だ。
「…ぁふ」
そんな晴れやかな自分の心を感じつつ、もう一度欠伸が漏れる。
…そういえば。
最近、なんだか夢見が悪い気がする…。
どんな夢を見ていたかなんて全く覚えていないんだけど…こう、なんていうか。
目覚めてすっきりした感じはしない。
何かが胸に引っ掛かるような、そんな感覚。
夢を見ていた気がするのに、どんな夢を見ていたのか覚えていない。
そういう感覚なのかな?これ。
「どうせならユウの夢でも見てればいいのに…」
ユウのことを想っていれば、自然と力が湧く。
昨日少しだけ感じられたユウの体温は、私の心と体を熱くさせた。
……もっと触れていたかったな…。
「ふぅ~ん」
溜息混じりにぼやいた本音。
すぐ傍で嫌ーな相槌が聞こえて、思わずギシリと体が固まった。
…嫌な予感。
「そうかぁ、神田が恋しいかぁ~。雪にもそういう女らしい一面あったんだなぁ」
「あいつのどこがそんなに良いってんだよ…」
顔を上げれば、いつからそんなに寄せてきていたのか。すぐ目の前には無精髭姿のジジさんとバズ。
ニマニマと嫌な笑顔を浮かべるジジさんに対し、バズは仏頂面。
………面倒な二人に聞かれてしまった。