My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
✣
「…あのさ」
「おう。なんだ?」
「いや…これって」
「はい? なんでしょう」
「もうさ…」
ひんやりと冷たく硬い独房の椅子。
そこに腰掛けたまま、目の前の薄汚いご飯のトレイを見る。
一つ、二つ、三つ、四つ。
私の周りに並んでいるトレイの数。
…私こんなに暴食するタイプじゃないんだけど。
「私もう残飯処理係りになってな」
「おおー! ついに言ったぞ雪が! 聞いたかバズ!」
「おおよ! 認めたな残飯だって! ついに認めやがったな!」
「わーっ! なんで言っちゃうんですかぁ先輩ぃいい!!」
思わず漏れた本音は、ジジさんの歓喜の舞に遮られた。
同じく隣で喜びの雄叫びを上げてるのはバズ。
一人悔し涙を流しながら、地面に拳を打ち付けているのはゴズ。
「これで賭けは俺らの勝ちだなぁ!」
「帰ったら5ギニー払えよ、ゴズ!」
「えぇええ~…」
「……」
5ギニーて。
結構な大金じゃないですか。
というか何それ。
私で賭け事やってたの?
……平和だな、此処。
「…アレン達に見られたら呆れられそ…」
思わず溜息を零しながら、仕方なしに目の前の残ぱ…じゃない、獄中飯を食す。
あ、今日は固形物が一つ入ってた。
お芋かな?
昨夜。
結局ルパンは現れることなく、だけど一晩中ユウは私の傍で一睡もせず見張っていてくれた。
マリ達と合流するからと、朝早くにパリ警察署を出て行ったけど…。
…久しぶりに、ぐっすり眠れた気がする。
固い床の上で、柵越しの体温だったけど。
毛布代わりの団服からは馴染んだユウの匂いがして、まるでユウのベッドで包まれて寝ているような感覚だった。
こんな囚人だらけの独房の中じゃ、普通は熟睡なんてできないけど…ユウが傍にいてくれたから。
だから安心して眠れたんだろうな。
「ふぁ…」
だけど遅くまで起きていた所為か、まだ眠気は残ってるし体も多少ダルい。
口に手を当てて欠伸を零しながら、視界に入り込んできた"それ"にふと目が止まった。
左手首にはめられた臙脂色の数珠。
「……」
じっと見ていると、つい口元が緩んでしまう。